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A2ーBCP(その2)

前回は中部国際空港のBCP(A2ーBCP)を話題にさせていただきました。同空港のA2ーBCPの概要はホームページで公開されていますが、今回はこれを元にその内容の一部を確認してみたいと思います。(産業防災研究会で議論されたことは非公開となっていますので、その内容には触れません)

まず、同空港で想定されている自然災害は、南海トラフ地震を想定した地震動が「震度6弱」で、津波の浸水被害は空港島周辺部で1m未満の浸水がありますが、滑走路・駐機場および空港ターミナル等の主要設備は浸水を免れます。しかし、別の公開資料によれば、津波高を1m加算した場合(より厳しい条件としてこの条件による想定が求められている)の試算も行われており、この場合、空港島全域が1m程度浸水するという想定になっています。一方、台風による高潮については、伊勢湾台風を想定基準してTP(東京湾平均海面)+2.69mとなっており、この場合の浸水被害は空港島の概ね全域について、0.5~3mの浸水となっています。(別の公開資料では、室戸台風が伊勢湾台風のコースで上陸した場合として、概ね全域にわたり0.3~1m、一部1~2m)。このため、津波や高潮については、空港ターミナルの2階以上に避難することで安全は確保されると考えられますが、駐機している航空機については、3mの浸水においてどの程度の被害が発生するのかは不明です。また、空港には航空機のほかに、航空機を牽引する車(トーイング車)、タラップ車、消防車など様々な車両や設備がありますので、これらは浸水の被害を受けそうです。この点については、私が勤務していた火力発電所でも同様の懸念があり、自衛防災隊の消防車などはより高いところへ移動させる必要があると考え、その場所としてタービン・発電機が納められている建屋(本館)の中へ避難させることを検討したことがありました。同空港の場合、最も高い位置にあるのが空港ターミナルであり、その下に空間はありませんので、空港車両の避難移動は難しいかもしれません。

高潮で私が気になる点は、護岸内部に浸水または降雨で溜まった水の排水です。空港島はTP+3.79m~5.79mの護岸で囲われています。火力発電所も同様に海側には護岸がありますが、新名古屋火力発電所は名古屋港の九号地という島の中にあり、九号地全体が護岸で囲われています。通常、降った雨は側溝から海へ排水されますが、潮位が高いとき(高潮発生時)には、側溝の排水口よりも潮位が高いため、降った雨や吹き込んだ海水はどんどん溜まってしまいます。同様の現象は同空港でも発生するかもしれません。

なお、同空港の場合、電気室や情報通信機械室等の入口は、可搬式の防潮板や水密性のある扉が設置されているほか、航空灯火用の電源設備である屋外キュービクルなどは防潮堤で囲われていることから、これらが直接の被害を受けることは回避できそうです。また、同空港の非常用発電設備については20時間の稼働が可能(給油可能な場合は250時間まで稼働)と記されているのみで、その詳細は不明ですが、屋外キュービクルなどが防潮堤で囲われていることから、非常用発電設備も同様であると考えられます。

津波や高潮に備えた電源設備の設置方法は十分に考慮されるべきことであり、平成30年の台風21号における関西国際空港では、第一旅客ターミナルの地下電気室が浸水し、同ターミナルビルへの電源供給の半分以上が停止しました。中部国際空港については、この教訓を踏まえた対策が実施されているものと考えます。 ちなみに、東日本大震災で重大な事故を引き起こした福島第一原発は、非常用発電設備が地下にあったことから、これが浸水して稼働できませんでした。中部電力の火力発電所の場合、伊勢湾台風の被害を踏まえ、非常用発電設備および発電所内の基本的は配電設備は2階に設置されていましたが、平成以降に建設・増設された発電所では、津波や高潮の被害想定を踏まえた設計の見直しにより、非常用発電設備が1階に設置されるようになりました。このようなコストダウン設計もやむを得ないことですが、南海トラフ地震や近年被害が甚大化している風水害を考慮すると、それらの対策の再検証や見直しが必要ではないかと思います。

 
 
 

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