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産業防災研究会-2

毎週1回以上の頻度で投稿をしたいと思いつつ、いろいろと重なり、前回の投稿から3週間も空いてしまいました。

さて、今回は2月16日に開催された産業防災研究会の感想などをご紹介したいと思います。この研究会で話し合われたことは、事務局が公表するもの以外、参加者が個別に発信することは禁止されていますので、私の感想や気づきのみのご紹介となります。 今回の研究会では、能登半島地震への対応状況について、電力、ガス、燃料、通信、上下水道の各分野から報告がありました。地震被害の大きさに加え、被災地の地形の特殊性などから、現地支援や応急復旧対応にスピード感が足りないような報道もされていますが、そのような事情の下でも、精力的な支援が行われていることがわかりました。 たとえば、全国の電力会社は人員と共に多くの発電機車を投入し、通信は衛星携帯電話を救援活動を行う機関に貸し出し、住民向けにはマルチチャージャー(充電器)、モバイルバッテリーの貸し出しをはじめ、多くの移動基地局車を投入しています。 一方、被災地の多くはプロパンガスを使用しているため、都市ガスの被害はなかったものの、水道についてはその復旧に時間がかかっています。 これらのライフラインの被害や応急復旧の状況を踏まえて、南海トラフ地震が発生した場合のことを考えてみましょう。南海トラフ地震は関東から九州にかけて太平洋側の広範囲において甚大な被害が発生します。よって、太平洋側については他の地域の支援に人員、機材ともに派遣することが難しいものと考えられます。可能性としては、日本海側からの支援が期待できますが、そのリソースは太平洋側と比べると相当小さいものになってしまいます。 それでは、南海トラフ地震に私たちはどう備えるべきなのでしょうか? いくつかのキーワードを挙げてみましょう。 ①ビルや家屋の耐震強化

②防災用品・備蓄品の見直し

③二次避難場所の確保

①については、新耐震基準で建てられた家屋の倒壊がほとんどなかったことを踏まえると、最も重要な対策となります。この対策を加速するための費用面の行政支援、税制措置などは国の施策として早期に充実を図るべきでしょう。倒壊を減らすことで、避難所の過密防止、火災の低減、震災廃棄物の低減など相乗効果は幾重にも広がります。 ②については、従来から1週間程度の備蓄が必要とされてきましたが、それではとても足りないことは明らかです。太平洋岸から少し離れて内陸部や中山間地へ入ると、被害は震度5強・弱のレベルに下がりますので、建物被害は大幅に少なくなると考えられます。しかし、だからと言っていつもの生活が維持できることはありません。電気は広範囲にわたって長期間停電するものと考えられます。被害がより大きい太平洋岸に救助や応急復旧のためのリソースが投入されることを考えると、これらの地域への公的支援は期待できないと考えるべきでしょう。このため、各家庭の備蓄は最低1カ月程度分は確保する、地域内の共助で補いあう仕組みを構築しておくなどの対策が必要になると考えられます。

③については、太平洋側の被災地域内では公的避難所が収容可能人員を優に超え、超過密状態になることが考えられますので、太平洋側と山間地や日本海側の自治体同士の二次避難場所に関する協定やそのための施設の設置(太平洋側の自治体の費用負担を含めて)は勿論のこと、余裕があれば個人で別荘などの物件を確保していくことも必要でしょう。 近年では、過疎化が進む地域では空き家が増えていますから、別荘とは趣が違うかもしれませんが空き家を有効活用する施策も考えられます。取得や維持に要する費用を行政が一部負担することで個人負担を軽減することが考えられますが、いざというときのために、購入者は普段から定期的に利用することで地元の活性化につながるメリットも期待できます。

いずれにしても、これまでの震災では全国の行政、企業、個人からの支援が行われましたが、南海トラフ地震はそれがほとんど期待できない状況になることが容易に想像でるはずです。しかし、私たちは支援は得られるはずだという甘えた期待を放り投げることができないでいると思います。今回の能登半島地震の支援活動状況を整理し、現状ではどのような限界があるのかを国民に対して明示し、国、地方行政、企業、個人がそれぞれどのような備えを充実していく必要があるのかを具体的に考えていくことが必要ではないでしょうか?


ちなみに、産業防災研究会の座長である福和先生が登場する記事や番組をいくつかピックアップしてみましたので、是非ご参照いただきたいと思います。

能登半島地震で見えてきた10個のキーワード


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