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バースマスター(3)

南海トラフ地震においては、地震や津波による直接的な人的・物的被害に留まらず、長期にわたるであろう避難生活に加え、経済活動の大幅な縮小・停滞による二次、三次的な影響は、日本の復興が大きく妨げられることになりそうです。 そのような中、すべてのライフラインを支える電力の復旧、送電再開は極めて重要であり、そのための火力燃料(LNG、石炭)の輸入、受け入れには強いレジリエンスが求められます。

港湾物流勉強会での議論に加え、このほど実施した操船シミュレータによる入出港プロセスの検証作業で見えてきた様々な課題に対しては、産学官が連携して解決に向き合っていかなければなりません。具体的には、輸入と入出港に関わる手続き方法の強靭化(システムの強靭化等)、航路啓開に必要なリソースの増強(サルベージ船の増大・配備、水中ドローンの開発・配備等)、瓦礫置き場の確保、船舶代理店および同業務の強靭化、水先人やタグボート(操船者含む)の確保、バースマスターの多能化などです。

「いざとなれば何とかなる」という楽観的な姿勢ではなく、具体的なBCPを構築し、訓練を行い、見直しを行うというサイクルを着実に回し続けることが大切です。 さて、今回の検証は南海トラフ地震が発生後、相応の日数が経過し、LNG船が入港できる条件が整ったタイミングを想定して行いましたが、併せて、南海トラフ地震が発生した直後の緊急離桟についても確認しました。 通常の離桟は、荷役終了後、水先人が乗船し、必要数のタグボートや警戒船がそろった状態で行われますが、荷役中に南海トラフ地震が発生した場合は、水先人やタグボートの到着を待っていては津波が到達してしまいます。このため、これらがそろっていない状況で急ぎ離桟しなければなりません。 具体的には、LNG船のスラスター(水流を起こして桟橋から離れる装置)と警戒船1隻だけで離桟し、180度回頭して沖へ向かうことになります。(LNG船は入船状態で着桟しているため180度回頭する必要があります) LNG船の船長が当該の港に精通している場合は、このプロセスを指揮できるかもしれませんが、通常の離着桟は水先人の指揮下で行われています(責任は船長にあります)ので、緊急離桟を的確に指揮することは難しいと考えられます。実際、3.11の東日本大震災の際には、東北電力の火力発電所で石炭船が離桟するも回頭の最中に座礁するという事象が発生しています。 このため、今回の検証作業は当該の港に精通しているバースマスターがLNG船に乗船して、水先人の代わりに離桟を指揮するという非常時の形態を模擬して行われました。勿論、この方法は現状においては認められていませんので、南海トラフ地震に対するレジリエンスを高める諸検討課題のひとつとして確立していく必要があります。

それにはまだまだ時間がかかりそうですが、いつ発生してもおかしくない南海トラフ地震に備えて、バースマスターの皆さんがこのようなケースを想定し、関係者の皆さんと一緒に、現時点でできる限りの研さん、訓練を続けておられることを今回知ることができ、大変素晴らしいことだと感動しました。 港に関わる仕事はさまざまな職種のプロによって支えられています。バースマスターに限らず、それら様々なプロの皆さんが、日ごろから南海トラフ地震に対してできる限りの備えをしていくことが大切だと思います。


 
 
 

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