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日本酒の五味



物語の中で、後に居酒屋『粋酔』(すいすい)のマスターとなる松浦が、先代の女将から「五味」の話しを聞かされます。日本酒の五味は甘酸辛苦渋(かんさんしんくじゅう)であり、思い出に置き換えると「甘い」以外はどれも嫌なものだが、お酒はこの五味の調和によって美味しさが生まれる。人生も同じだというお話しでした。

そもそも「五味」は、基本味(きほんあじ)、五原味とも言い、味覚の根本となる5つの要素・味を指しますが、それは、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つであり、日本酒の五味を構成する辛味、渋味は、刺激やしびれとして感じもので、五味には含まれないとされています。ちなみに、この五味にはそれぞれ信号としての役割があり、甘味の元となる糖はエネルギー源としてのシグナル、塩に含まれる塩化ナトリウムはミネラルとしてのシグナル、レモンやお酢などに含まれている酸は腐敗を示すシグナル、苦味は毒物を示すシグナル、昆布やかつお節などに含まれるうま味成分はアミノ酸(たんぱく質を作る元となる)を示すシグナルだそうです。

日本酒の五味では、塩味とうま味は含まれず、辛みと渋みがこれに代わりますが、日本酒の辛味は唐辛子の「辛い」とは異なり、一般的にはアルコール度数が高いと「辛い」と感じます。また、渋味は辛味と感覚的には近く、酸とアルコールが強いと渋味を感じやすくなるそうです。

一方で、うま味の成分であるアミノ酸は「命の源」とも言われますが、体内で生成することができない必須アミノ酸であるリジン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシンの他、運動時のエネルギー源になるアラニン、内分泌・循環器系機能の調整や成長ホルモン分泌の刺激をするアルギニン、免疫機能の維持や消化管の保持をするグルタミン酸など、さまざまなアミノ酸が日本酒には含まれています。なかでもアミノ酸が2つ以上結合したペプチドは、醸造アルコールを添加しない純米酒に一番多く含まれています。このように、日本酒にはさまざまなアミノ酸が含まれ、その含有量は他の酒類に比べてダントツの1位であり、ほかにも有機酸、ビタミンなど120種類以上の栄養成分が含まれています。一方で、焼酎やウイスキーをはじめとする蒸留酒にアミノ酸は含まれません。

また、日本酒に含まれる成分の中には、がん細胞の増殖を抑制する効果が認められていたり、新型コロナウィルスの増殖を100%阻害すると言われる5-ALA(これもアミノ酸)も食品類の中ではトップクラスの含有量があります。(5-ALAは日本酒や納豆などの発酵食品に多く含まれており、その量(食品類100gあたり)は、納豆の25μgに対し、日本酒は70~353μgという数値があります。ただし、新型コロナウイルスの予防や治療に必要な5ーALA量を日本酒から摂取するのは難しいとされています)

さて、居酒屋で日本酒を注文する際に、「辛口」あるいは「甘口」という表現を用いられる方がよくおられます。しかし、この辛い、甘いの感じ方は、上述のとおり日本酒度によるところが大きいとはいえ、酸度などにも影響され、そのバランスによって微妙に異なるほか、飲み手の味覚にも左右されますので、甘い、辛いを単純に決めることはできません。近年では、日本酒の味わいはとても多様化しており、白ワインを思わせるものもあります。ですから、「辛口」を注文しても、全体の味わいや個人の味覚から「甘い」と感じることがあります。実際、私も同僚たちと飲んでいて、同じ日本酒を飲んでいるのに、「辛い」という人と「甘い」という人がいました。

以下、ご参考ですが、日本酒の裏ラベルには「日本酒度」「酸度」「アミノ酸度」が記載されていることがあります。それぞれの解説については、月桂冠のホームページ(https://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/qa/sake/sake05.html)などをご参照ください。

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