日本芸能従事者協会の森崎めぐみさん
- 代表 榎本敬二
- 6月19日
- 読了時間: 3分
6月13日に開催された日本労働科学学会の第47回イブニングセッションの講師は、一般社団法人日本芸能従事者協会の代表理事を務められている俳優の森崎めぐみさんでした。 森崎さんは、映画「人間交差点」で主演デビュー後、黒沢清、是枝裕和などの監督作品に出演し、テレビでは「暴れん坊将軍」「相棒」など多数に出演されています。 昨今、ジャニーズ事務所や中井正広氏など芸能界における問題が世間を騒がせていますが、芸能人(タレント)は芸能事務所とマネジメント契約を結んでいるものの、芸能事務所の従業員ではなくて、個人事業主・フリーランスであることが一般的です。このため一般的な会社員のような労働者としての保護を受けることはできず、一部の有名タレントを除き、多くのタレントはさまざまな不安を抱えながら仕事をしています。一発成功すれば高収入を得ますが、いつ人気が下がるか分かりませんし、怪我をすれば仕事を失うことになります。 日本の芸能従事者が初めて得た社会保障は、2021年4月に始まった特別加入労災保険制度で、これに加入したさまざまな職種の芸能従事者がつながって「日本芸能従事者協会」が2021年9月に発足しました。その設立に奔走したのが森崎さんであり、この保険制度の運用のため、厚生労働省のつなぎ役として発足した全国芸能従事者労災保険センターの理事長も務められています。
ジャニー喜多川性加害問題が表面化したのは2023年ですから、森崎さんたちは、その随分前から芸能界や芸能従事者に関わる諸問題に向き合われてこられたということです。
現在、同協会は、芸能従事者の労働安全衛生を充実させるための事故防止対策や健康管理、過労死防止対策、取引の適正化や就業環境の整備など政府のガイドラインや法律の立法、白書の調査などに対応されています。今月からフリーランス法が施行されましたが、同協会の活動はこの法律の成立にも大きく関わられました。 日本のコンテンツ産業は大きく発展しており、それには多くの芸能従事者が関わり、その発展を支えています。しかし、諸外国ではユネスコ国際教育機関等の世界条約に批准して、法整備が進み、社会保険制度等のさまざまな施策によって、芸能従事者は「労働者」として保護されることが浸透しているのに対し、日本は大きく後れをとっている状態にあります。
この状態を今、大改革しようとされているそのキーマンが森崎さんです。 今回は、この森崎めぐみさんという一人の女性とその活躍をご紹介したくて投稿させていただきました。 私は、芸能界や芸能従事者に関わる諸問題は、芸能従事者側だけで解決することはできず、テレビ局をはじめとする制作側、そして芸能事務所側が大きく変わる必要があると思います。
ジャニー喜多川問題、そして昨今のフジテレビ問題がその変革のチャンスになっていると思いますが、私たちはついつい華々しいことに意識が向きがちで、不祥事は忘れてしまいやすいものです。改革には時間がかかりますから、社会がその改革に関心を持ち続けることが大切だと思います。森崎さんたちの活動が、制作側や芸能事務所側の改革にも大きく影響していくことを期待したいと思います。 森崎さんやその活動に関心のある方には、『芸能界を変える たった一人から始まった働き方改革』(森崎めぐみ書・岩波新書)を読んでいただきたいと思います。 以下、同書の紹介文です。 『芸能界、それは自由で華やかな憧れの世界。しかし一歩その中に足を踏み入れてみると、そこは将来への保証など存在せずハラスメントが横行する、無法の世界だ。しかし、このままでいいのだろうか? 役者でありながら法整備とルール作りに奮闘した著者が、芸能界のこれまでを鋭く批判し、これからのあるべき姿を描き出す。』
Komentar