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指差呼称

執筆者の写真: 代表 榎本敬二代表 榎本敬二

物語の冒頭、主人公の専一が指差呼称を行うシーンがあります。

ここでは、『現場実務者の安全マネジメント』から引用して、指差呼称についてその効果、実践のポイントなどを紹介します。

指差呼称の効果については、次の4つが挙げられています。(芳賀繁先生)

①注意の方向付け(対象に注意が集中する)

②多重確認の効果(目と耳と口と筋肉で確認する)

③脳の覚醒(口や腕の動きで脳が覚醒する)

④あせりの防止(あせり、習慣的動作を防止する)

芳賀繁先生が実施した実験によると、指差呼称をまったく行わないときに対し、指差呼称を行うことによって、エラー率が1/6まで減少したそうです。

指差呼称は、個人で行うエラー対策として、極めて有効なものですから、積極的に実践すべきです。しかし、実際の現場では、恥ずかしいからか?正しい指差呼称が行われていないケースが多く見受けられます。

正しい指差呼称は、その気になれば誰にでも実践できることです。しかし、一生懸命、熱心に指差呼称を行っていても、誰もホメてくれなければ、徐々に手抜きの指差呼称になってしまいます。指差呼称をちゃんとやれ!と指導することも必要でしょうが、正しい指差呼称を実践している人をホメてあげて、気持ちよく指差呼称ができるような雰囲気をつくり上げていくことも大切なことです。

一方で、上記の実験結果は、指差呼称を行ってもエラーをゼロにできるわけではないことを示しています。発電所ではチームで仕事をしていますので、チームでエラーを防止することが必要となります。ある電力会社の発電所では、指差呼称を行ってから3,2,1とカウントダウンをして操作をすることにしているそうです。このカウントダウンの間に、正しい機器(スイッチ)を操作しようとしているのかを周囲の人が確認するのです。


私が以前に勤務していた発電所では、機器の操作にあたっては、指令操作シートまたは操作手順書を使っていました。ある時、操作対象とは異なるスイッチを操作してしまうエラーが発生しました。指差呼称を省略していたわけではありません。なぜエラーが発生したのか? その時に確認された要因のひとつが、手順書の記述とスイッチの名称板の表記の違いでした。

たとえば、発電所の機器に「押込通風機」というボイラーへ燃焼用の空気を送り込むファンがありますが、これを略称で「FDF」と呼んでいます。このため、手順書やスイッチの名称板の記載に「押込通風機」と「FDF」が混在していたのです。

一例ですが、手順書には「FDF起動」と記載されているにも関わらず、スイッチの名称版には「押込通風機」と刻印されいるため、操作前に手順書を読み上げる際には「FDF起動」と呼称しておきながら、実際にスイッチを前にして呼称する際には名称板に従って「押込通風機起動」と呼称します。

これは簡単な例ですが、実際に操作するスイッチには、「押込通風機」の場合、本体にAとBの2つがあり、それぞれに「潤滑油ポンプ」A、Bと「制御油ポンプ」A、Bが附属します。そして、さらに複雑な名称の機器もあります。

手順書の読み上げと操作前の指差呼称に違いがあると、すぐ近くにある別の機器の名称板に向けて指差呼称をしていても、間違いに気が付きにくくなってしまいます。

プラントの運転操作においては、手順書の記載と名称板の記載が合致していなければなりません。

 
 
 

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