「自分は理想的なマネジメントを行っていると自負していても、それは独りよがりであって、周囲は別の見方をしていることが多い」前回のブログはこのような記述で締めくくりました。
人は自分のことをよく知っているようで、実は知らないことも多いわけです。一方で、人は相手のことを、先ずは見た目や伝聞などでその人物像を捉えようとし、そこで生じた先入観をベースにしてコミュニケーションを始めます。自分のことも相手のことも満足に知らない状態では、コミュニケーションはぎこちなく、チームワークも生まれません。
ユナイテッド航空が開発したCRMセミナーでは、グリッド理論を用いることで、「自分が理解している自分のスタイル」と「他人から見た自分のスタイル」に違いがあることを学びます。「自分は気さくで話しやすい人間だから、部下からも進言しやすい」と思っていても、部下は「あの人は自己中心的で気難しい人で相談しにくい」と感じているかもしれないのです。
サンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが、1955年に対人関係における気づきのグラフモデルを発表しました。自己分析をしながら他者との関係を知ってコミュニケーションを模索する心理学モデルであり、二人のファーストネームを組み合わせて、「ジョハリの窓」と呼ばれるようになりました。田の字に4つの枠(窓)を設け、横軸に自分が「知っている」か「知らないか」、縦軸に他人が「知っている」か「知らないか」を取ると、左上は、自分も知っていて他人も知っている「開かれた窓」が、右上には自分は知らないが他人が知っている「気づかない窓」となります。同様に、左下は、自分は知っているが他人は知らない「隠された窓」、右下は、自分も知らないし他人も知らない「暗い窓」となります。
①開かれた窓(開放の窓)は、自分も他人も知っているので。自由に伸び伸びと行動できる領域です。
②気づかない窓(盲点の窓)は、他人からは丸見えにも関わらず、自分だけが気づいていない領域であり、他人との間にズレや行き違いを生じる原因となります。
③隠された窓(秘密の窓)は、自分は知っているが他人には隠している領域であり、行動が不自然になります。
④暗い窓(未知の窓)は、自分にも他人にもわからない未知の領域です。
チーム内のコミュニケーションを良くしていくためには、まずは「隠された窓」を小さくしていくこと、すなわち積極的に自分を開示していくことが大切です。自分の強みは誰でも自慢したいものですが、これも度を過ぎると相手にとっては嫌味になるので注意が必要です。一方で、自分の弱みも見せていくことで、メンバーからはいろいろなアドバイスを受けられるようになり、その結果、自分が知らなかった自分に気づくことができて、「気づかない窓」を小さくすることができるのです。
グリッド理論では、理想型と言われる9:9タイプが目指すべき姿のように思われますが、仕事も人間関係も「完璧」な人間は存在しないし、そのような人間は敬遠されることもあります。もしも、あなたの上司が非の打ち所がない9:9タイプだったら、上司の言動にあれ?と思うことがあっても、それを指摘することは難しいと思います。このようなことから、9:9からやや5:5へ近づいたスタイルが、現実的な理想型と言えるかもしれません。
私自身は、9:9にはほど遠いタイプでしたから、失敗することも、悩むこともよくありました。そんな私ですから、役付職になるとき「自分で適切な判断を下さるだろうか」と少し不安になりましたが、その時の上司は、「あなたならどうする?」と部下に聞けばいいんだよ、とアドバイスしてくれました。きっとその上司も、それを実践してきたのでしょう。以降、今に至るまで「あなたならどうする?」をよく使わせていただいています。勿論、自分なりの考えや意見を持ったうえで使うのですが、自分では気が付いていなかったこと、知らなかったこと、勘違いしていたことなどに気が付き、随分と助けられてきました。
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