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確認会話




それではコミュニケーションに関する話題を数回にわたって取り上げていきたいと思います。

物語のなかで、主人公の専一は、後に結婚する雪子が病院で経験したエラーについて先輩の秋本に相談し、医療分野におけるヒューマンエラー防止の取り組みを学びため、安全研究会のメンバーである佐々森医師のところへ出向きました。そこで専一は『TeamSTEPPS』(チームステップス)について教えてもらうのですが、チームステップスはどこの職場でも応用できるだろうとしつつ、一般的な手法として『確認会話』を勧められます。そこで今回は『確認会話』についてご紹介したいと思います。『確認会話』という用語が社会で使われるようになったのは、次の事案がきっかけだと思います、

2005年、日本航空インターナショナル(当時)は、B747貨物機の主脚部品の誤使用、仁川国際空港における管制指示誤認、出発時における非常口扉のドア・モードの変更操作忘れ(「脱出スライド自動展開モード」にしないまま出発した)という事案を相次いで発生させ、同年3月に国土交通大臣から事業改善命令を受けました。その後も安全上のトラブルが連続したことを踏まえ、同年8月に社外有識者による安全アドバイザリーグループを設置し安全性の向上に取り組みました。同グループは、柳田邦男(座長)、畑村洋太郎、鎌田伸一、芳賀繁、小松原明哲(以上敬称略)という著名な方々で構成され、2005年の12月と、2009年の12月の2回、提言を行いました。この2回にわたる提言において数々の指摘や施策の提案が行われましたが、そのなかの1つが『確認会話』でした。同グループの提言書には、つぎのとおり記載されています。

「ヒューマンエラーによる事故の中には、確認の徹底によって避けることが出来たと見られるものが多い。“ひとこと念押し”、が事故を防げたのではないかと思われることが多い。 ここで言う確認とは、「相手へ正確に伝達できたかどうかの確認」「伝達を受けた内容の確認」ということのみならず、「相手がやろうとしていること、していることに対して自分が抱いた疑問の確認」「自分自身が、今まさに行おうとしていることの自己確認」「自分の考えの的確性に関して、相手に評価を求める確認」など、さまざまな意味が含まれる。 しかし、確認は「言うは易く行い難し」そのものである。確認行為をより具体的に根づかせるためには、「確認会話」の能力を向上する必要があり、そのためには日常における自覚訓練が必要である。」

日本航空は上記の提言を踏まえ、2006年3月に『JALグループ確認会話事例集』を作成し、社員に配布してその実践、定着に取り組みました。この事例集の冒頭で紹介されているのが1972年にマイアミで発生したイースタン航空トライスター機の墜落事故であり、物語のなかでも紹介しています。確認会話がどのようなものであるかは、上記の提言内容からお分かりいただけると思いますが、物語のなかでは、身近な事例として翌月の約束をするシーンが出てきます。1か月後の水曜日に会う約束をする際、手帳のカレンダーを1ページ余分にめくってしまい、15日が水曜日だったので15日に会いましょうと伝えたけれど、実際は16日が水曜日だったというお話しでした。この例では「15日ですね?」と復唱による確認を行っても、間違いには気が付きませんが、「15日の火曜日ですね?」というように、火曜日という別の言葉を入れることで間違いに気が付くことができます。このように、確認会話のポイントの1つとして、別の言い方や表現で確認するというものがあります。例えば、アルファベットのⅮ(ディー)はE(イー)と聞き分けることが難しく同じように聞こえる時があります。人間には「期待聴取」という特性があるので、A、B、Cと続けば次はDだと思って聞きますから、相手がイーと行ってもディーに聞こえてしまいやすいのです。この場合「ディーですね?」と聞き返しても、相手は「イーですね?」と聞き返されたと勘違いすることがあり、「ハイ、イーです」と応えてしまえば間違った復唱を認めてしまうことになってしまいます。このようなエラーを防止するため、私が働いていた発電所ではDを「ダ―」と発音していましたが、「ABCDの4つ目」という言い方をすることもありました。(自衛隊や海上保安庁、航空の世界などでは、フォネティックコードを使い、ABCD・・・をアルファ―、ベータ―、チャーリー、デルタ・・・と言い換えて使います)

いずれにしても、日本航空のアドバイザリーグループが示唆したように、「ひとこと念押し」と言ってもそんなに簡単なことではありません。別の言い方や表現で確認するというようなテクニックを使うことも必要ですし、「ひとこと念押し」をするという共通の文化がなければ、しつこい、鬱陶しいと感じてかえって人間関係を悪くしてしまう可能性もあります。ある人は「おせっかい文化」と言っていましたが、確認会話は職場全体で取り組むことで文化とまではいかないまでも、職場共通の作法として定着させることが大切だと言えるでしょう。

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