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A2ーBCP(その3)

執筆者の写真: 代表 榎本敬二代表 榎本敬二

前回に引き続き、中部国際空港のBCP(A2ーBCP)を話題にさせていただきます。

そもそもA2ーBCPは、当該空港の利用者の安全を確保することだけでは十分ではありません。勿論、空港利用者の安全確保が第一ですが、空港としての重要な役割を果たす必要があります。その1つが「防災拠点」として後背圏を支援する機能です。例えば、通常では離着陸が行われない自衛隊機(ヘリ等)が同空港を利用して緊急物資の輸送等を行うなど、防災活動の拠点としての役割です。

中部国際空港の場合、B-787型機の大型部品を「ドリームリフター」(大型特殊貨物機)で輸出しており、陸路と海路を使って大型資機材を荷揚げ、荷下ろしできる機能を備えています。東日本大震災においては、その後の電力不足に対応するため、緊急のガスタービン発電機の輸入(合計:航空機20機分)が、Bー787型機部品専用輸送路を使用して行われましたが、そのような大型資機材の輸入、輸送のハブ的な機能も期待されます。

もう1つは、災害時における他空港のバックアップ機能です。東日本大震災では発生直後、成田、羽田の両空港が閉鎖されたため、両空港に向かっていた航空機86機が降りられなくなり、うち14機は燃料不足で「緊急事態宣言」を出していたとされます。予定していた空港へ降りられなくなった86機は新千歳、横田基地、中部国際空港、関西国際空港などへ着陸しましたが、中部国際空港へは19機(緊急事態宣言5機含む)を受け入れたとされています。中部国際空港はセントレアと称されるとおり、日本の中心に位置することから、首都圏や関西圏で不測の事態が発生した際には、他空港のバックアップ空港として重要な役割を果たすことになります。

さて同空港のA2ーBCPの特徴の1つは、24時間体制で運用されているCOC(セントレア・オペレーション・センター)の存在です。COCは滑走路点検、ターミナル運用、各種空港施設の運用管理、警備、防災などを集中管理しており、警察、消防、税関、鉄道会社、航空会社などの関係機関と連携しながら、空港で起こり得るあらゆる事象に対応しています。そして、地震、津波、台風などの自然災害発生時には、中部国際空港の社長を本部長、空港長を副本部長とする総合対策本部がCOCに設置されます。

もう1つの特徴は、その構成です。A2ーBCPは「BーPLAN」(基本計画)と「SーPLAN」で構成されており、基本計画は空港利用者の安全確保を目的とした「滞留者対応計画」と空港ネットワークを維持するための空港施設の「早期復旧計画」で成り立っていますが、「SーPLAN」は、「機能別の喪失時対応計画」であり、電力供給、通信、上下水道、燃料供給、空港アクセスの7つの機能をはじめ、各機能が喪失した場合の対応計画が策定されています。従来の

BCPは、「何が起きたか」という事象別に対応計画が策定されていましたが、「SーPLAN」は「何が失われたか」毎に対応計画を策定することで、その組み合わせであらゆる事態に対応できるように工夫されています。

なお、本テーマの最初にご紹介したとおり、各空港のA2ーBCPは、国土交通省が策定した「A2ーBCPガイドライン」に基づいて作成されていますので、このガイドラインを参考にすることで、空港以外のBCPについても充実、強化を図ることができるものと思います。


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