能登半島地震については、先の投稿で余震が減りつつあると記載したのも束の間、震度5弱や4の揺れが続いています。私の同僚が富山の実家へ帰省していて地震に遭いましたが、小学生のお子さんはメンタル面で影響を受けたかもしれないとのことでした。家の中にいましたが、家屋に被害が出るような状況ではなかったものの、経験したことがない揺れや、家族の振る舞いを目の当たりにするなどして、心に相応の影響を受けたのだと思います。石川県の被災地でも、余震が続く中で心にダメージを受けながら頑張っている人たちが多くおられると思います。今後PTDSにならないよう、十分なケアが行われることを期待したいと思います。
被災地支援については、自衛隊、消防、警察、海保をはじめ、各都道府県や市町村、電力会社などが様々な活動を行っていますが、例えば、愛知県が関連している活動については次のホームページで随時情報公開されています。
これを見ると報道だけではうかがい知れない様々な活動が行われていることがわかります。それらは、あらかじめ定められている「制度」「協定」「計画」に基づいて実施されているものもあれば、中央省庁(例えば総務省や厚労省など)からの指示・要請によるもの、被災地行政(石川県)からの要請によるものなど様々です。
一方で被災自治体へ「現地情報連絡員」(リエゾン)を派遣することにより、被災地との情報連絡を迅速かつ正確に行う例が多く、これが適時適切な支援を行う上で大きく機能しているものと考えられますが、リエゾンにはまだまだ課題も多いようです。
リエゾン(Liaison)は「仲介、橋渡し等」という意味のフランス語です。リエゾンは都道府県、国土交通省などの省庁、自衛隊、指定公共機関などがその職員を派遣していますが、「リエゾン」をネット検索すると、国土交通省は制度化しているものの、その他については国が定めた制度ではなさそうです。
上記の愛知県の資料では「応急対策職員の派遣」として県の災害対策課が数名を派遣していますが、これについては「総務省が所管する応急対策職員派遣制度に基づき、防災安全局職員を石川県志賀町に派遣し、現地災害対策本部の災害マネジメントを総括的に支援」と記載されています。
「応急対策職員派遣制度」は2016年(平成28年)に発生した熊本地震を受けて創設された制度ですが、「応急対策職員派遣制度に関する運用マニュアル <第4版>」(令和3年5月・総務省)によると、応援職員が把握した情報を随時共有することが必要とし、その情報の中には、被災都道府県や市町村へのリエゾンの派遣状況やリエゾンから得られた情報が含まれている(すなわち、応援職員の役割の一つにこれらの情報収集が含まれている)ことから、本制度に基づく応援職員はリエゾンではないということになります。
ちなみに「災害時に都道府県が基礎自治体へ派遣するリエゾン職員の制度課題に関する調査」(地域安全学会梗概集 No.50, 2022.5)には、「都道府県リエゾン職員の派遣制度は法に基づく制度ではなく,各都道府県独自の制度である」と記されています。
(なお、この報告によると、派遣は災害対策基本法、災害時相互応援協定、応急対策職員派遣制度など多様なスキームに基づき派遣調整が行われていること、またこれらの応援職員の派遣は、基本的には派遣元からプッシュ型で一方的に行われるものではなく、例えば災害対策基本法に基づき被災自治体からの要請を受けて支援が行われるとされています)
日本はこれまでに数々の自然災害を経験し、そこから学んだことを生かして防災・減災力を高め、現在、国土強靭化に取り組んでいるところですが、今回の能登半島地震ではまた新たな学びを得ることになりました。リエゾンの問題もそうですが、ボランティアの問題など、さまざまな課題を改善、克服していくことが大切です。しかし、防災対策は自助、共助、公助の順で重要とされているとおり、私たち一人ひとりが自助力を高めることが肝心であることを忘れてはならないと思います。
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