元日に発生した能登半島地震は今も断続的に余震が続き、被災地では懸命の救助活動が続けられていますが、徐々に判明してきた地震と津波、土砂崩れ等による甚大な被害に対し、救援活動が追いついていない状況のようです。さまざまな支援の輪が広がり始めましたが、一方で避難生活に伴う災害関連死のリスクが高まる時期に入ったとされています。救援活動がこの先順調に進むことを祈りたいと思います。
さて、元日の地震に衝撃を受けた翌日には、羽田空港で海上保安庁(海保)の航空機と、着陸してきた日本航空(JAL)の航空機が衝突、炎上する事故が起きてしまいました。幸いJAL機の乗員乗客は全員避難することができましたが、海保機に搭乗していた隊員5名が亡くなりました。 事故の状況、発生に至る経緯などは徐々に明らかになってきましたが、事実と詳細は運輸安全委員会の調査に委ねるべきと考えます。
このようななか、航空機のパイロットや客室乗務員、管制官などの労働組合で構成する民間団体「航空安全推進連絡会議(JFAS)」が5日に、刑事捜査ではなく事故調査を優先するよう求める緊急声明を出しました。また、正確な調査を実現するため、報道関係者やSN
Sで発信する一般の人にも、憶測や想像を排除し、正確な情報を扱うよう要望しました。
航空機事故の原因は複合的な要因が潜在しているため、国際民間航空条約(ICAO条約)は事故調査と再発防止を原則にしており、同条約に批准している日本でも、最も優先されるべきは事故調査であり、刑事捜査ではない、調査結果が再発防止以外に利用されるべきではないと主張しています。
私はこの事故に対して社会が大きな関心を示すことは大切なことだと思います。そして、犯人捜しの刑事捜査ではなく、再発防止のための事故調査を優先する社会全体の合意が形成されていくことを期待したいと思います。 たとえば、滑走路への誤侵入は極めて稀に発生する事象ではなく、繰り返し発生しているということを勘案すると、誤侵入したことを責め立てても何の解決にはならないでしょう。また、過去の誤侵入事象はゴーアラウンドで事故を免れていたからといって、ゴーアラウンドを指示しなかった管制官や、滑走路上の海保機に気が付かなかったJAL機の責任を追及しても同じことです。 (航空重大インシデントとして運輸安全委員会が調査を行った事案は、2007年から2022年までの16年間で32件発生しており、そのなかで中〜大型民間機が絡むものは2010年代に7件発生しているとのことです) 日本航空機操縦協会のホームページによると、現在の管制用語である「TАXI TO HОLDING POINT~」が使われ始めたのは、2012年からであり、これは滑走路への誤侵入を防止する対策として変更されたものとのことです。同ホームページによれば、滑走路誤進入が発生するのは、地上滑走の許可をもらった直後ではなく、地上滑走の許可をもらい数分間地上滑走した後というケースが多いのではないかとのことです。数分間地上滑走しているうちに、完成からの指示内容を勘違いしてしまう可能性を危惧しています。 「ヒューマンエラーが事故の原因だ」という発想でエラーを起こした当事者を犯人だと決めつけるだけでは、社会の安全は一向に高まりません。ヒューマンエラーは原因ではなく、引き起こされるものであり、ヒューマンエラーを引き起こす要因に目を向けることの大切さを社会全体の価値観としていくことが求められると考えます。 最後に、今回の海保機は能登半島地震への対応として救援物資を運ぶために運用されており、同機は事故前の24時間以内に2回被災地へ派遣されていたとのことであり、同機に搭乗していた隊員の皆さまも、被災地支援に一生懸命取り組まれていたことと思います。心よりお悔やみ申し上げます。
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