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執筆者の写真代表 榎本敬二

第83回全国産業安全衛生大会 IN広島

11月13日(水)~15日(金)の3日間にかけて開催された『第83回全国産業安全衛生大会』(主催:中央労働災害防止協会)と同時開催の『緑十字展2024』に参加してきました。大会会場は、広島市の平和記念公園にある広島国際会議場とその近くにある2つの施設、緑十字展は広島県立広島産業会館でした。

その内容をご紹介する前に、今回の広島の盛況ぶりに触れておきたいと思います。同大会の参加者は前回の名古屋大会が約11,500人とのことですから、それと同程度またはそれ以上の参加者がいたように思います。さらには、宮島が紅葉シーズンを迎えたこともあり、日本人旅行者は勿論、外国人も多く見られました。これに修学旅行生が加わり、会場周辺や広島駅は大混雑の状況でした。私たちは会社から3名で参加しましたが、ビジネスホテルの予約が少し遅れた結果、広島市内で7千円程度で連泊できるところは1つもなく、13日は広島市の隣りの海田町(海田市町・東海田町が合併して海田町となったため、駅名は海田市駅)のビジネスホテル、翌14日は県をまたいで岩国まで行かなければなりませんでした。大会参加者は無料で「広島平和記念資料館」を見学できたのですが、大型バスが次々と到着し、通常の倍ぐらいの入館者があったようです。15日の広島駅では、お土産物ショップのレジに30m程度の行列ができていました。 さて、大会の内容についてですが、初日の13日は午後からの開会式、表彰式、講演というプログラムですが、2日目、3日目は、10以上の分科会が8会場に分かれて発表20分、講演1時間などで構成され、そのプログラム表を見ると緻密なパズルのように組まれています。各分科会(会場)ごとに、午前と午後に10分間の休憩が1回または2回ありますが、1つの発表や講演が終わると、すぐに次に移るため、聞きたい発表や講演が別の分科会(会場)の場合は急いで移動しなければなりません。 さて、今回のプログラムを見ると、発表のタイトルに多く出てくるキーワードは、次のとおりです。 ・リスクアセスメント(リスク評価)、KY・KYT、TBM、ヒヤリハット

・安全監査(安全パトロール)、対話巡視

・AI、DX、ICT、IoT、VR、ドラレコ、チームス、グーグルやユーチューブ、データベース、ドローン

・危険感受性向上、安全体感教育

・安全文化・安全風土、4S

・熱中症

また、わずかですが近年注目されているキーワードとしては、次が使われています。

・心理的安全性、ウエルビーイング 近年では現場の安全確保や安全教育にデジタル技術の活用は不可欠になりつつあります。また、沸騰化と称されるような気温上昇に伴い、熱中症対策は年々重要性を増しています。このような近年のトレンドに合わせて、緑十字展ではデジタル技術を活用した現場の見守りや危険体験教育に関するものや、空調服などの熱中症対策用品の出展が多くありました。

例えば、昨年までは熱中症の予兆を察知するウエアラブル端末(腕時計タイプ)は、深部体温を測るものが主流でしたが、今回では脈拍から予兆を察知するとともに、転倒した際の自動通報機能を備えたものなど、年々進歩している様子が窺えました。

一方で、心理的安全性やウエルビーイングなど新しいキーワード以外のものは、何十年も前から使われているものばかりであり、今でもこれらが安全の三種の神器的な存在であることに違いはなさそうです。

例えば、ヒヤリハットの収集・活用について発表したある鉄道会社は、「もしやハット」という想像事例の報告も収集・活用しているとのことでしたが、これは30年以上前に発案された「想定ヒヤリ」と同じようなものです。しかし、30年以上前の「想定ヒヤリ」は、ヒヤリハットが恥ずかしいもの、事故の芽というマイナスイメージを持っていたり、処罰の対象になる可能性を排除できないことから、報告しやすいように考え出されたものであるのに対し、今回の「もしやハット」はヒヤリハットを題材にして、さらにそこから導き出されるヒヤリハットを想定するものであり、過去のものとは異なる仕組みになっていると考えることができます。

これは、従来からのヒヤリハットがSafety-Ⅰの活動であるとすれば、「もしやハット」はSafety-Ⅱの取り組みに近いものと考えることができます。実際、その鉄道会社では「グッジョブ」も同じ仕組みの中で収集・活用しているとのことです。さらにほかの会社では、「ヒヤリハット大賞」という表彰の制度を導入しているところもありました。

このほかにも、リスクアセスメントやTBM-KY、4S、安全パトロールなどは、古くから用いられている安全ツールですが、これらをいかに継続させるか、全員参加に持っていくか、モチベーション向上につなげるかという点で、さまざまな工夫が試行錯誤されている様子を窺うことができたように思います。

タイトルのなかに「Safety-Ⅱ」が使われていたのは1件だけでしたが、それぞれの発表の素材には、Safety-Ⅱの考え方が盛り込まれており、ようやくここにきて、従来の「安全管理」から「安全マネジメント」へとステージが変化してきたことを実感できるようになってきた、そのような印象を持つことができました。

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