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福知山線脱線事故から20年

2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故から20年が過ぎました。大切な人を失った方、後遺症に悩まされている方など、今なお多くの方が苦しみ続けておられます。

20年前のあの日、私は事故が起きたことを職場の食堂のテレビで知りました。現場の状況が映し出された画面を、しばらく茫然として眺めていたことを思い出します。画面にくぎ付けになるという表現より、思考が停止してボーっと眺めていたという状況でした。 私たち「安全研究会」のなりたちについては、3年前の4月24日に投稿したブログでご紹介しているとおり、この事故がきっかけとなっています。事故の1年ほど前、当時私が勤務していた火力発電所へ、JR西日本の若い運転士のみなさん数名が訪ねてこられました。同社の自己啓発支援制度を活用し、若いメンバーで安全の勉強会を立ち上げ、終業後に集まって研さんをしているとのことでした。「今のままでは、いつか大きな事故が起きてしまう。変えていかなければならない」という危機感が、彼らの言葉から伝わってきました。3年前のブログにはそう書かせていただきました。 福知山線の事故は、彼ら若い運転士たちが危惧したものよりも遥かに大きくて悲惨なものであり、彼らに強い衝撃を与え、深い悲しみと悔しさ、無念さにつぶされそうになったことと思います。その苦しみは、同じくJR西日本の若手運転士たちと交流のあったJR東日本の西村司さんにも伝わり、間もなくして西村さんが同じような事故を二度と起こさないため、会社や業界の垣根を越えて安全について学びあおう」と「鉄道安全研究会」を立ち上げられました。これが、現在の「安全研究会」につながります。

事故から20年後の4月25日、事故現場の「祈りの杜」では、慰霊式が執り行われ、遺族やJR西日本の役員らが犠牲者を追悼しました。JR西日本の長谷川一明社長は、「あらためて心より深くおわび申し上げます」とした上で、「事故を風化させないことの重要性を強く認識しており、役員、社員一人ひとりが事故の悲惨さ、いのちの大切さを心に刻み、一層力を入れて事故の事実や反省、教訓を後世に継承してまいります」と述べられたと報道されています。同社では、事故のあとに入社した社員が7割を超え、記憶や教訓の継承が課題となっており、社員の安全教育をあらためて徹底するとのこと。これは極めて重要なことですが、とても難しいことでもあると思います。 「安全教育」をどう行うか、これほど悩ましいことはありません。ルール(ノウハウ)と、そのルールができた背景(ノウホワイ)を教える(教え込む)一方的な教育では、その効果は限定的なものになるでしょう。しかし、多くの企業では、ノウハウとノウホワイの教育で満足してしまっているのではないでしょうか? 勿論、一方通行の教育ではなく、グループディスカッションやワークショップなども取り入れることで、単なる知識教育で終わらせないような工夫も取り入れられている例も多いと思います。

「安全教育」や「安全人材育成」の手法やあり方に、正解やスタンダードはなく、常に工夫し、改善し、対象者一人ひとりにあわせてきめ細やかにフォローし続ける必要があるでしょう。そして、それは教育主管部署や教育担当者だけの役割ではなく、組織全体の重要課題としてとらえるべきものだと言えるでしょう。

私は、25日の慰霊式で長谷川社長が述べられた内容のすべてを把握していませんが、「社員の安全教育をあらためて徹底する」が結論であるか、あるいはマスコミがその部分のみを切り取って報道したのであれば、個人的は違和感が拭えません。「安全教育を徹底する」はきわめて表面的な表現だし、「あらためて徹底する」の「あらためて」には、これまでの教育には何らかの問題が生じていたことが窺われ、それを「再徹底」だけで片づけようとしている印象を受けるからです。 何か問題が起きると「教育が不十分だったので、あらためて教育する」という対策が示されることがよくありますが、教育が不十分だった理由、原因、要因を追究し、そによって見いだされた問題を改善して教育しないと、一時しのぎで終わってしまう可能性が高いのです。

一方で、1月にこのブログに投稿したとおり、JR東日本の「事故の歴史展示館」を見学させていただいた際にご一緒されたJR西日本のМさん(上記の当時の若い運転士たちのひとり)や、Mさんに引率されて参加されていた若い運転士のみなさんの、真摯な学びの態度、姿勢は、同社の光明であると思います。

 
 
 

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