新型感染症の脅威(玩プーでお伝えしたかったこと)
- 代表 榎本敬二
- 2月16日
- 読了時間: 4分
更新日:2月24日

『玩プー』では、「H5N1」というインフルエンザウイルスが複雑な変異をして人類に脅威を及ぼすという設定をしました。物語の中では、プーを研究所へ運ぶクルマの中で、研究者の天馬が宙美にインフルエンザ感染症について解説をしています。
ここでその内容を振り返ってみましょう。
・H5N1は、人-人感染をする新型インフルエンザになった場合、 人類にとって脅威になる可能性が高いとして、以前から恐れられてきた。
・インフルエンザウイルスは、抗原性の違いから、A、B、C、Dの4つに分類される。
・日本で主に冬に流行する季節性インフルエンザは、A型のH1N1かH3N2(A香港型)、またはB型の3種類である。
・鳥に対して高い病原性を示すウイルスに変異したものを高病原性鳥インフルエンザといい、鳥から人への感染が確認されている高病原性インフルエンザとしてH5N1がある。
・幸いH5N1は人-人感染は起きていないが、それが起きた場合は未曽有の被害となる。
・1918年に大流行した新型インフルエンザは通称スペイン風邪と称されるが、これにより、全世界の人口の25~30%が発症し、約2000万人~5000万人が死亡した。
・1957年の通称アジア風邪では、100万人~400万人が死亡した。
・1968年の通称香港風邪でも100万人~400万人が死亡した。
・かつて厚生労働省が新型インフルエンザの発生による国内での被害を試算したが、それは過去に発生した軽度から中度の弱毒性を元にしており、それでも罹患者数3200万人、死者数17万~64万人と想定された。
・強毒性のH5N1の場合はさらに甚大な被害が出る。
今回の新型コロナウイルスによる死者数は、日本では4年間で約10万6千人であり、世界では、WHOが2022年に発表した数値によると、報告数は450万人であったものの、実際は1500万人を上回ると推定したとのことです。
季節性インフルエンザによる日本の死者数は、年間千人~3千人程度ですが、「超過死亡」という概念(WHOが提唱し厚生労働省も導入している考え方で、直接の死因がインフルエンザではなく肺炎等の他の疾患による場合、死因別死亡数にはあらわれないため、インフルエンザが流行した年に通常年と比較して死亡者数が多くなった場合、それをインフルエンザによる死亡と見なす考え方)による死者数の場合、年間1万人~3万人の年もあったことを踏まえると、4年間で約10万6千人という数字は極端に大きいものではないようにも思えます。
しかし、今回の新型コロナウイルスのパンデミック初期における強力な感染力と致死率や、
社会への影響を考えると、大きな脅威であったことには間違いありません。このような中、
私たちは大きな犠牲を伴いながらも今回の新型コロナウイルスを乗り越え、(コロナ前とは同じではありませんが)平常を取り戻しました。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という例えのとおり、私たちは今回の新型コロナウイルスのパンデミックを乗り越えたことで、根拠のない達成感というか、「次が来ても大丈夫」といった自信を持ってしまっているのではないでしょうか? あるいは「次も同じぐらいで済むだろう」というバイアスが働いてしまってはいないでしょうか?
ここで、今一度『玩プー』の話しに戻りますが、私たちが本来備えなければならないのは、厚生労働省が想定した死者17万~64万人であり、さらにはその何倍もの被害を出すであろう強毒性のパンデミックのはずです。 今回の新型コロナウイルスで各企業ではBCPを作ったり、見直したりして対応してきたと思いますが、新型コロナウイルスが収束した今、その見直しを行った企業はどれくらいあるでしょうか? 本来、その見直しは、今回の状況を踏まえてさらに厳しい条件である強毒性を前提としたものにしなければならないはずですが、前提条件をそのままにしたり、あるいは部分的にでも緩和してしまった企業はないでしょうか?
この冬は、新型コロナに加え、インフルエンザ、マイコプラズマの同時発生、同時感染が起きています。さらには、能登半島地震や豪雨による土砂災害など、自然災害も増えています。南海トラフ地震の発生も懸念されています。
新型感染症と自然災害の重複発生というケースも真剣に考えなければならない状況になっているのではないでしょうか?
そのように考えると、今回の新型コロナウイルスは神様からの警鐘であったようにも思えます。『玩プー』は、その役割を果たすには不十分な作品ですが、少しでも皆さまの警戒心を強めるためにお役に立つことができれば幸いです。
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