「数分」とは、何分ぐらいか? 先日、私の職場でこのことが話題になりました。私は小学生のころに教えられた「5~6分」だと自信を持っていましたが、どうやら今は(いや随分前から?)違うようです。職場の20代のメンバー何人かに聞くと「2~3分」だと答えるのです。ネットで検索してみると「2,3分または5,6分」と説明されていますので、どちらも間違いではなさそうです。ネットで紹介されているアンケート結果では、2~3が42%、3~4が46%、5~6が12%という解答例があります。どうやら5~6は少数派のようです。
私の勝手な推察ですが、数分とか数個の「数」は私たちの感覚(主に許容できるか否か)によって変化しているのではないでしょうか? 例えば「数分遅れますから待ってください」という場合、私の世代は5~6分が許容の範囲で、2~3分だと「早かったね」となり、10分ぐらいになると「遅いよ」という感覚ですが、現代では5~6分でも「遅いよ」という感覚になります。「数個もらえる」は私たちは5~6個もらえると期待しますが、現代だと5~6個もらえると「たくさんもらえた」という感覚になります。年月とともにシビアになってきているということかもしれません。
このほかに日常よく使う言葉に「少々」があります。料理で調味料を「少々」という場合は「小さじで量れない量」のことだそうですが、「少々お待ちください」の場合の「少々」は、「わずかな時間お待ちください」という意味で、数秒間から数分間程度のこととされています。しかし、数秒と数分では大きな違いがありますね。要するに「少々」はその場面場面によって時間の幅が変化するということでしょう。例えば「上の者に確認してまいりますので少々お待ちください」と言われれば、数秒間で帰ってくるとは思いませんし、十数秒間隔で物事が動いている状況で「少々」と言えば、数秒間をイメージするはずです。
ちなみに「しばらく」や「今しばらく」という言葉も使いますが、これは「すぐではないけれど、さほど時間がかからないさま」ということであり、「しばらく」に「今」を付けた「今しばらく」は「しばらく」よりも短くなります。よって、「少々」<「今しばらく」<「しばらく」という時間関係になりますが、いずれにしても会話の文脈によって時間の長短が大きく異なります。例えばビジネスの場面で「もう一度検討してみますので今しばらくお時間をください」と言えば、数日から1週間が一般的とされています。結局、この会話における文脈とは、双方の期待値(待たせる場合は相手の期待値)がベースになるということでしょう。
さて、「数分」は英語で「a few minutes」と訳されますが、この「a few」には2~3とか5~6という具体的な数を示すものではなく、期待値や基準値よりも小さいときに使われるのだそうです。ですから、例えば数万人規模の集客を期待していたのに、随分少なかった場合(肯定的に少しは来たというニュアンスで表現する場合)、当然2~3人というレベルではありませんが、「a few」が使われるそうです。(・・・,but a few came.)
話しを「数分」の「数」に戻しましょう。「数分」が2~3分でも5~6分でも日常生活では大きな問題を生じることはなさそうですが、「数時間」となると2~3時間と5~6時間とでは大きな違いがありますし、「数万円」や「数日」も大きな差があります。年齢層が高くなると「数」は5~6で、若い人は2~3と理解しているわけですから、高齢の会社の上司が「数日待つからもう一度検討し直しなさい」と言えば、上司は5~6日間の猶予(実質翌週になりますね)を与えたつもりですが、受ける若手は2~3日間しかもらえないということになります。この感覚の違いは様々な場面でコミュニケーションの齟齬を招きそうです。私生活では大事になることはほとんどないでしょう(多くは普段から会話をしている仲なので)が、ビジネスの世界では具体的な数値でコミュニケーションを取った方が良いかもしれませんね。
Comments