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安全文化‐4(組織事故と安全文化の4要素)



そろそろ「安全文化」から次の話題へ移りたいとことですが、もうしばらくお付き合いください。今回は「組織事故」と「安全文化を構成する4要素」についてです。

物語のなかで、ジェームズ・リーズンが著した『組織事故』という本のお話しが出てきます。新ヒヤリハット活用制度の運用開始から3カ月が過ぎた頃には、保全部と請負者からの報告件数が増え始めました。一方、運転部は第二課からの報告は順調に伸びているものの、一課からの報告が低調なままなのに疑問を感じた主人公の専一は、第一課の中央制御室へ理由を探りに行きました。そこで運転責任者から事情を聞き出そうとした専一ですが、途中で運転第一課長の鬼怒原が来てしまい、専一はやむなく退散しました。鬼怒原は、『組織事故』の中で説明されている安全文化を構成する4要素の内、「正義の文化」を引き合いに出して、ヒヤリハットを報告する際には反省文も書くように課員に求めていたのでした。

さて、『組織事故』の原著は1997年に出版され、日本では翻訳本が1999年に出版されましたが、今でも読み続けられています。著者のリーズンは、この本の中で自ら提唱した有名な「スイスチーズモデル」を詳しく説明し、組織文化、組織の安全文化とは何かについて言及しつつ、安全文化をエンジニアリングする術について述べています。その際、リーズンはあえて「安全文化をエンジニアリングする」というそれまでにない言葉の使い方をしました。「安全文化は、あたかも宗教的経験に似た、激しい変革によって初めて達成できるかのように多くの人たちはいうが(私は)逆の立場をとる。(中略)安全文化を社会的にエンジニアリングできるのではないかとする立場である」リーズンはそう記しています。この考えのもとでリーズンが導き出したのが、安全文化を構成する主要な要素としての4項目「報告する文化」「正義の文化」「柔軟な文化」「学習する文化」でした。

それでは、それぞれの文化について少し補足をしておきたいと思いますが、〔 〕内は、私なりの要約ですので、正しくは『組織事故』を読んでいただきたと思います。


まず「報告する文化」については、次のような構成でその必要性を説いています。

・理想的な安全文化は安全性を高めるためのエンジンである。

←このエンジンの駆動力は警戒を続けることで得られる。

←そのために安全情報システムが必要だ。

←「情報に立脚した文化」が必要である。

←これには、自らのエラーやニアミスを報告しようとする「報告する文化」が必要である。

〔ヒヤリハット報告を推奨し、重大な兆候のサインをチェックする〕


つぎに「正義の文化」については、

・効果的な報告する文化は賞罰をどう扱うかにかかっている。

←言語道断な行為には厳しい制裁が必要だ(すべての不安全行動を盲目的に許すことは正義に反する)。

←「正義の文化」が必要である(安全上重要な情報には報酬を与えることも必要)。

としています。

〔ヒヤリハット報告制度を正しく運用するために、重大な違反行為は厳しく処罰する〕

・「柔軟な文化」については、「高信頼性組織」を踏まえ、その特性として、平時の組織形態(階層型、上意下達的)と危機に直面した時の形態(フラット型、その分野の専門職に権限移譲)を柔軟に切り替えることができる「柔軟な文化」があるとし、第一線従事者の技術、経験、能力を尊重することが必要であるとしています。

〔危機においては現場・第一線のプロに対応を委ねる。そのためにはプロを尊重し、その養成に投資すること〕


・最後に「学習する文化」については、安全情報システムから正しい結論を導き出す意思と能力、そして大きな改革を実施する意思を持たなければならないとしています。

〔ヒヤリハット報告などから得られた重大な兆候のサインを捉え、その学びを組織改革につなげる〕


ちなみに、これまでに記載したそれぞれの「文化」の構図は、「安全文化」と「情報に立脚した文化」は同等であり、「情報に立脚する文化」は、「報告」「正義」「柔軟」「学習」の4つの文化が作用しあって形成するとしています。

さて、リーズンもレジリエンスについて論じていますが、レジリエンスエンジニアリングの提唱者であるホルナゲルは、「レジリエンスの本質的4能力」として「対処」「監視」「学習」「予見」を挙げています。ここでは詳細を省きますが、リーズンの4つの文化との間に、次のような関連性があるように思います。「報告する文化」(重大な兆候のサインをチェックする)=「監視」「予見」、「学習する文化」(重大な兆候のサインから学び、組織改革につなげる)=「学習」「対処」。

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