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安全パトロール(その3)



前回は、安全パトロールの真の目的はリスクを有する状態や作業を改善し、作業者が安全に仕事ができる状態をつくり上げることであり、作業者まで含めた全員でその目的を共通の認識にしなければならないこと、そのためには、信頼関係が大切だが、発電所のように電力会社-グループ会社-協力会社という多層構造でメンテナンスが行われている現場では、良好なコミュニケーションを成立させることは容易ではないと述べさせていただきました。一例として発電所を挙げていますが、他の産業のメンテナンスの現場や建設現場なども、同様の多層構造になっているケースが多いですし、建設現場の場合は、鉄筋、基礎コンクリート、柱、屋根、内装など様々な専門業者が入れ替わります。

さて、「安全文化」の2回目のところで、火力原子力発電技術協会が大原記念労働科学研究所の協力を得て行った「発注者-受注者-下請負者の三階層間における安全意識の共有」に関する研究についてご紹介させていただきましたが、この研究では複数の電力会社、複数の火力発電所において質問紙とインタビューによる調査が行われ、発注者(電力会社)、受注者(電力会社のグループ会社)、下請負者(協力会社)それぞれの安全意識のレベルと、相互間のギャップが測定されました。その結果、最も成績が良かった(安全意識の得点が高く、三者間のギャップが小さい)のは、小規模な発電所であり、これに対して大規模な発電所はあまり良い成績ではありませんでした。私が勤務していた電力会社では、約400万kWの発電能力を有する大規模発電所3カ所を対象に調査が行われましたが、この調査の直前まで私が勤務していた発電所(私がリスクマネジメントシステムを構築した発電所)の場合、電力会社の安全意識の得点は高かったものの、グループ会社や協力会社との間に相応のギャップが生じているという結果でした。大規模な組織の場合、その構造はピラミッド化し、いくつもの課、グループで構成され、そこには多様な人財が存在します。その結果、他の課やグループとの間で競争意識が芽生えることは珍しくないでしょう。それは必ずしも悪いことではありませんが、コミュニケーションを悪くする要因になるのも事実です。一方で、小規模な組織の場合は、何かトラブルが発生すれば、お互いに協力しあわなければ対処できませんから、日ごろからコミュニケーションが取りやすいわけです。この時の調査でもう一つ気になる結果が得られました。それは3カ所の調査を行ったもう一つの発電所のことですが、そこは発電業務を行う部署と保修業務を行う部署が互いにいがみ合うようなところがありました。結果は、電力会社とグループ会社の間に、すべての評価項目について顕著なギャップがあり、その中間に協力会社が位置するような状況でした。発電と保修の間の仲違いの影響が出ていたのかどうかわかりませんが、きわめて特徴的な結果でした。もしも電力会社の内部で発電と保修が仲違いし、その影響が協力会社との間のギャップを生じされる要因になっていたとすれば、それは大きな問題です。一方で、当該発電所においても、発電と保修の間の関係が良好な時期があったといいます。その際には、発電と保修それぞれのトップ(課長)がとても仲の良い関係にあったそうです。トップ同士の関係が、その組織同士の関係に投影されるという事例かもしれません。トップはそのような影響力を持っているということを肝に銘じていおく必要がありそうです。

さて、話が安全パトロールから逸れてしまいましたので戻したいと思います。あらためて安全パトロールの目的に話題を戻しますが、リスクを有する状態や作業を改善し、作業者が安全に仕事ができる状態をつくり上げることが安全パトロールの目的であれば、不安全状態や行動(顕在化しているリスク)を指摘して是正させるという構図ではなく、作業者自らが工夫し、改善して安全を高める現場とすることが、あるべき姿であると考えられます。そのために必要なことは、良いところを見つけてホメルというスタイルへ変えていくことではないでしょうか? マイナスの状態からゼロの状態へ戻すのではなく、プラスの状態へ引き上げることが、Safety-Ⅱの考え方にも合致しており、今後はSafety-Ⅱを志向するパトロールが求められるものと思います。

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