本日(2022年9月19日)、最強クラスの台風14号が九州、中国地方で猛威を振るっています。甚大な被害が出ないことを祈ります。
この物語の最終章は「台風から発電所を守る」です。このブログは、なるべく章立てに沿って解説を進めていきたいと考えていますので、台風の話題はもう少し先に取り上げるべきところですが、台風14号が襲来中ということもありますので、今回は順序を入れ替えさせていただきたいと思います。
火力発電所は、復水器の冷却のために大量の海水を使うため、海に面して建設されるのが一般的です。大半は埋立地であり、その地盤面は台風や高潮の被害を直接受けることがない高さとなっています。しかし、満潮と台風接近が重なるケースでは、発電所の敷地内に降った雨水が海へ落ちず、構内の一部が冠水することもあります。雨水側溝の末端にはゴミが海へ流れ出ないように格子が設置されている箇所もあるため、落ち葉などで格子が目詰まりして排水を阻害しないようにあらかじめ掃除することも必要です。
さて、火力発電所では台風の接近、襲来に備えて、準備体制、警戒体制、非常体制などの体制を敷きます。襲来が確実で相応の被害が予想される場合には、交替勤務者以外の要員を必要数招集して備えます。まず、台風の影響が出ていないうちに、構内に仮置きしてあるメンテナンス資材などが飛散しないように片づけたり、固縛したりし、工事で使用しているクレーンなど強風で倒壊する恐れがあるものについてはブームを降ろした状態にします。また、燃料や薬品、高圧ガス等の受入は襲来前に終えておくようにします。防災資機材が本館(タービン建屋)や事務所以外の倉庫などに保管されている場合は、本館内に必要なものを移すこともあります。
こうして、いよいよ台風がの影響が出てくる頃には、本館やボイラー建屋内などを二人一組で定期的に巡回し、雨水の侵入などが発生していないか点検して回ります。
火力発電所が河口近くにある場合は、上流から流れてきた落ち葉やゴミなどが、海水の取り入れ口に大量に流れ込んでスクリーンを目詰まりさせることがあり、運転を継続できなくなることもあります。また、送電線への飛来物の接触や、台風に伴う落雷によって送電線が故障することもあり、この場合にはその時の発電量と残された送電線の容量に応じて、一部の発電が停止します。落雷の場合はその影響が瞬時であることが多く、送電線の故障によりしゃ断器が一旦開放されるものの、高速再閉路制御が成功すれば送電を継続することができます。
近年では、台風の襲来に伴って、配電線が故障するケースも多く発生しており、その範囲が広く復旧に相応の日数がかかる場合には、全国の電力会社から応援が駆けつけて対応しますが、火力発電所でも発電を継続するため、あるいはやむを得ず停止した発電ユニットを早期に復旧するため、発電所員とグループ会社、協力会社が連携して、発電所を守っています。
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