南海トラフ巨大地震の被害想定見直し
- 代表 榎本敬二
- 4月10日
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3月31日に政府の有識者会議『南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ』(主査:名古屋大学 福和名誉教授)が、南海トラフ巨大地震の被害想定の見直し結果を公表しました。
nankai_setumei.pdf 前回の想定は「南海トラフ地震防災対策推進基本計画(平成26年3月)」において公表されており、それから10年が経過することから、今回の見直しが行われました。 結果は、死者数が最大33.2万人から29.8万人に減少しましたが、その理由としては建物の耐震化が進むことが挙げられています。 一方、資産等の損失は、約169.5兆円から約224.9兆円へ増加し、経済活動への影響も約44.7兆円から約45.4兆円へ増加しています。 このような想定を踏まえて、同ワーキンググループの報告書には「超広域かつ甚大な被害が発生する中で、リソース不足等の困難な状況が想定され、あらゆる主体が総力をもって災害に臨むことが必要」と記されています。 今回見直された想定において重要かつ注目すべきことは、平成26年の上記基本計画において、「死傷者数を概ね8割減少」という減災目標がまったく達成できていないということだと思います。例えば、同基本計画では、地震対策としての住宅の耐震化率について、平成20年の79%から令和7年には「耐震性が不十分な住宅をおおむね解消」という目標が記載されていましたが、これが思うように進展していません。 主査を務められている福和先生は、産経新聞の取材に対して、「あらゆる人が本気で事前対策するしかない。国が潰れかねない被害が出ると分かっていて、10年動かなかった。行政は実力を全部白状し、力不足だから本気で頑張りましょうと言うべきだ」と述べられています。 災害対策は「自助」「共助」「公助」の順だと言われていますが、この10年でほとんど何も変わらなったことを考えると、私たちは、「自助」「共助」を真剣に考えなければなりません。 前回のこの投稿では、少子高齢化のリスクについて書かせていただきましたが、福和先生は、別の取材に対して、「少子高齢化が進んでいる。今回の見直しは重要な警鐘だと理解してほしい」という趣旨のことを述べられおり、産経新聞の取材に対しては、「ますます少子高齢化が進む。災害リスクは、①外力の大きさ(災害の大きさ)②被害対象の規模③被害対象の脆弱(ぜいじゃく)性-で構成される」とし、②については「分散化を進めること」と指摘し、「納税額を耐震補強に充てる『耐震化ふるさと納税』をやるべきだ」「都会に出た人にはそれなりに責任がある。空き家も補強すれば、平時は(余暇を楽しみながら働く)ワーケーションや2地域生活の拠点、都市が被災したら疎開先として使える。関係人口が増え、故郷が荒れずに済む」と指摘しています。 〝耐震化ふるさと納税〟導入を 対策、未来の日本造る機会に 福和伸夫名古屋大名誉教授 直言×防災(産経新聞) - Yahoo!ニュース
私は、2020年に中部電力を退職した際に、岐阜県の八百津町の空き家バンクに登録されていた物件を購入し、今は2拠点生活を送っています。私の自宅は弥富市という海抜ゼロメートル地帯(実際はマイナス1m)にあり、南海トラフ地震では震度6強から7の揺れが襲い、津波によって近隣市町全員域が浸水する想定になっていますので、以前から避難先を検討していました。 八百津町へ行ってみると、私が購入した物件がある中山間地には、多くの移住者がおり、地元の方たちを一緒になって、活性化に取り組んでいることがわかりました。しかし、今後、八百津町の過疎化はまだまだ進み、空家が増えることも懸念されますから、上記の福和先生の示唆は本気で検討する価値があると思います。 ひとりで1つの物件を購入することが無理でも(実際にはお手頃な物件が多いのですが)、何人かで共同所有し、平時は交替で使用することで維持することもできると思います。また、物件の維持は地元の人がある程度有料で請け負い、その費用は行政が負担するという仕組みも考えられると思います。 勿論、非常時だけ利用するということでは受け入れる側も困りますから、平時から時々利用し、地元の取り組みにも参加することが重要です。 高度成長期や、そのおこぼれの恩恵を受けてきた私たちの世代とは異なり、私たちの子供の世代は、自宅以外に物件を購入する余裕がなくなっている場合が多いものと考えられます。私たちの世代が、次の世代のためにも、今こそ真剣になって、上記のような仕組みを考える必要があるのではないでしょうか?
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