ヒューマンエラー対策対策を考える上で、ヒューマンエラーがなぜ発生するのか、その要因について理解を深めることが必要です。私たちは目、耳、鼻、皮膚などの感覚器官(視覚器官、聴覚器官、嗅覚器官、味覚器官、皮膚など)を通じて外部から情報を入手(入力)します。この際、見落とし、見間違い、聞き逃し、聞き間違いなどのエラーが発生します。得られる情報は1つだけではありませんから、その時最も注意すべき情報を選択し、それに注意を向けます。この時、偏見や先入観などから選択間違いが発生します。車を運転していて、前方に幼稚園バスが止まっていたら、バスから降りてきた園児が道路に飛び出してくるかもしれないと考え、咄嗟にバスに注意を向けるでしょう。この時、道路の右側に子供がいることは視覚情報で認知していても、左から飛び出してくるかもしれない園児を注意の対象として選択した結果、右側の子供が道路を横断してくるのを見落としてしまうというエラーが発生します。次に、選択的に注意を向けた対象からの情報に基づき、何らかの行為をしようとします。幼稚園バスの例であれば、バスとの接触を避けるため右へ寄る、飛び出してくるかもしれない園児を想定して減速、徐行する、または一時停止するなどの行為をしますが、急な飛び出しに対する回避行動のような反射的な行為以外は、得られた情報に基づいて、どのような行為をすうるか判断・決心します。この判断・決心にあたっては、さまざまな記憶との照合を行いますが、記憶については、忘却により思い出せない、変容により誤った記憶になっている、別の記憶と照合してしまうといったエラーが発生します。この結果、判断・決心にあたって、不適切な行為を判断してしまう、決心が遅れる、判断・決心しないというエラーが発生します。そして、行為にあたっては、やりそこない、やりすぎ、やり忘れなどのエラーが発生します。幼稚園バスの例であれば、接触を避けようと右へ寄ろうとしたが、寄りすぎて対向車とぶつかりそうになった、原則・徐行しようとしたがブレーキとアクセルを踏み間違えたというケースです。そして、さらには行為の結果は次の情報入力へフィードバックされます。
このように、人間は脳で行う情報処理の各ステップと、行為の段階でエラーを生じさせますが、脳における情報処理は1つ1つ明確なステップを踏んで順に行われるわけではなく、選択の要素、記憶照合の要素、判断・決心の要素を峻別することはできません。このため日本ヒューマンファクター研究所は、脳の情報処理を「知覚」「記憶」「判断」「行為」という4つの要素に整理しています。
さて、前回はエラーの分類の例として、リーズンはスリップ、ラプス、ミステイクの3つに分類していることをご紹介しましたが、ラプスが記憶のエラー、ミステイクが判断のエラー、スリップが行為のエラーであることを今一度確認し、次回はヒューマンエラー対策の本題に入っていきたいと思います。
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