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ヒューマンエラーの分類

執筆者の写真: 代表 榎本敬二代表 榎本敬二


物語の中で主人公の専一は『安全マネジメント』に関する安全研究会の勉強会とその後の懇親会において、ヒューマンエラーはスリップ、ラプス、ミステイクの3つに分類できることを学びます。そこで今回は、エラーの分類と特徴についてご紹介したいと思います。

まずはその前に「ヒューマンエラー」の定義について話題にしましょう。スリップ、ラプス、ミステイクという分類はJ・リーズンが行ったものですが、リーズンはヒューマンエラ―を「計画された知的または物理的な活動過程で、意図した結果が得られなかったときに、これらの失敗が他の出来事によるものではないときのすべての場合を包含する本質的な事象」と定義しました。ちょっと小難しいですが、平たく表現すれば、考えたり動いたりするなかで、意図した結果が得られなかったもの(ただし、ほかに原因がある場合は除く)ということでしょう(計画されたとか、本質的なの記述についてはうまく説明できません)。ちなみに、JIS Z8115:2000【ディペンダビリティ(総合信頼性)用語】では「意図しない結果を生じる人間の行為」としています。このようにヒューマンエラーとは、意図した結果が得られないものであり、「結果オーライ」であってもヒューマンエラーとなります。なお、行為とは、国語辞典では「ある意思をもってするおこない」とされており、物理的な動きを伴う行動のように理解されますが、リーズンは知的活動も対象にしていますし、この後に解説するとおり、行動しないことによるエラーも存在しますから、幅広く捉えておいた方が良いと思います。

それでは、エラーの分類について話しを進めていきましょう。そもそもエラーを分類ことにどのような意味があるのでしょうか? 1つは、エラーが多様な形態で発生することに対する理解を深める上で役に立つと考えられます。様々なタイプのエラーがあることを知ることで、リスクアセスメントを行う際の発生の可能性をより的確にイメージすることができるようになります。そしてもう1つは、再発防止対策を立案する際に有効だということです。エラーのタイプごとに有効な対策が異なりますから、エラーのタイプが分かれば的確な対策を立てやすくなるわけです。

冒頭に記したとおり、リーズンはエラーをスリップ、ラプス、ミステイクの3つに分類しました。それぞれのエラーは物語のなかで解説をしていますが、ここであらためて振り返ってみます。「スリップ」は「行おうとした行為は正しいが失敗した」というパターンです。意図したとおりの行為ができなかったというケースです。野球における後逸などのエラーはスリップに該当することが多いでしょう。「ラプス」は「一時的な記憶の消失、記憶間違い」です。日常的に経験する「度忘れ」は典型的なラプスですし、記憶間違いも多くあります。「ミステイク」は「取り違い、選択間違いなど、判断自体が間違っているもの」です。

以上がリーズンの分類ですが、ノーマンは計画段階の間違いをミステイク、実行段階の間違いをスリップとし、スリップについて、さらに6つの分類を行いました(ここでは省略します)。また、スウェインは、決められた行為をしなかったエラーを「オミッションエラー」とし、間違った操作をするエラーを「コミッションエラー」としました。このほかにも、エラーの発生傾向に着目して、「ランダムエラー」「システマティックエラー」「スポラディックエラー」に分類する例もあります。この分類は、射撃を例に説明されることが多いのですが、的に対して上下左右まったく安定しないケースがランダムエラーであり、技量不足が原因となります。システマティックエラーは、中央の的から外れた場所に集中するケースで、特定のクセ(銃の場合は照準がズレているなど)が原因となります。「スポラディックエラー」は大半は的の中央に当たるが稀に外れるケースで、人間の特性によって引き起こされることが多いエラーです。

次回は、これらのエラーの分類を踏まえて、エラー対策について考えてみたいと思います。

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