バースマスター(2)
- 代表 榎本敬二

- 5月24日
- 読了時間: 3分
川崎汽船研修所様に全面的にご協力をいただき、操船シミュレータを用いて行ったLNG船の入出港プロセスの検証作業の当日は、あいち・なごや強靭化共創センターの福和センター長をはじめ、港湾物流勉強会から10名程度が参加しました。
まず、操船シミュレータを用いて、LNG船の操舵を体験して、LNG船がどのような動きをするのかを確認しました。たとえば右へ回頭する場合、舵を右に切って目指す進路に乗ってから舵を中央に戻しても、右回頭の惰性が働いていますから右へ行き過ぎてしまいます。このため、目指す進路に乗る前から反対側の左へ舵を切る「当て舵」という操作をしなければなりません。
さて、いよいよ検証作業です。船長・航海士、水先人、海上交通センター、タグボード、警戒船は川崎汽船研修所の講師陣がその役割を演じ、バースマスターは現役のM氏が担当することで、一連の流れが実際そのままにリアルに再現されました。
LNG受入桟橋の少し手前横まできたところでLNG船は停止しエンジンを止めます。ここからは水先人の指示の下、複数のタグボートがLNG船を押したり引いたりを繰り返しながら、桟橋の所定の位置に合わせていきます。最終段階では、桟橋側からバースマスターが船側へ指示を出して、桟橋側の荷役設備であるローディングアームと船側の接続口が合うように船の位置を微調整し、ピタリと合ったところでタグボートがLNG船を桟橋へ押し付けます。以降はバースマスターの指示の下、桟橋上で綱とり作業が行われ、たくさんの係留ロープによってLNG船の係留が完了します。
ここまでの検証作業では、どの役割もみな重要であり、何か1つでも欠けることがあれば、LNG船を安全に着桟させることはできないと思われました。しかも、それぞれの役割の担い手は熟練していなければなりません。
では、実際に南海トラフ地震が起きた場合は、どうなるでしょう? 前述のとおり、LNGを受け入れる断面では、大津波・津波警報は解除され、航路は啓開されていなければなりませんから、地震発生からは相応の日数が経過しているはずです。しかし、水先人、タグボート、警戒船、バースマスターなどが被災し、必要なリソースをすべて参集させることはできないかもしれません。
これらの人的・物的リソースは、大型船の離桟時にも必要であり、極めて重要な存在であり、極力被災から免れることができようなレジリエンス対策を講じる必要があります。また、やむを得ず被災した場合でも、限られたリソースを迅速に集めることができる手段も検討しておく必要があります。
先に述べたとおり、これらに必要な連絡調整は、船舶代理店がそのほとんどを行っていますから、南海トラフ地震においては船舶代理店が機能しなくても必要なリソースを集めることができるよう、緊急時の連絡調整体制・手段を明確にしておくことも求められます。
今回の検証作業によって、これまでの机上の検討では五里霧中状態であったことが、課題の解決までには至らないまでも、霧が晴れてきてこれからどう検討していくべきかが見えてきたように感じられました。(つづく)
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